加藤馨氏の戦争体験が書籍に掲載

 2022年1月に当ホームページで以下の記事を紹介しました。

 加藤馨氏が初めて戦場を体験したのが「カンチャーズ島事件」であり、加藤馨氏は「私は今でもこの日の苦しさは死ぬより苦しい1日で人間は疲労困憊したら駄目と悟りました」と振り返っています。

 この記事がきっかけとなり、日ソ紛争史を研究されている日本大学国際関係学部助教の笠原浩太氏よりご連絡をいただきました。笠原氏は、最初の対ソ大規模国境紛争であったにもかかわらず、その後のノモンハン事件や張鼓峰事件に比べ研究が滞っていた「乾岔子(カンチャーズ)島事件」に注目し、調査研究されていました。

残された資料が少ない中で、加藤馨氏の『回顧録』に注目されご連絡いただいたので、当研究所は『回顧録』のデータを笠原氏にお送りしました。そして書き上げられたのが『乾岔子島事件史:―一九三七年の日ソ紛争―』(錦正社)です。

 基本的には研究書ですので、当時の日ソの政治背景や軍幹部や外交官などの動きを整理した内容です。加藤馨氏の回顧録は先の記事でも紹介していますが、あくまで個人的な体験、感想を記したものに過ぎません。しかし、「一兵士の実体験として回顧した貴重な資料である」として、「第三章 乾岔子島事件の経緯」の最後に「付記」として「回顧録」を掲載していただいています。また、本書の最後の「謝辞」では、当研究所にも笠原氏が感謝を述べられています。

 加藤馨氏は、この戦場について「人間は疲労困憊したら駄目と悟りましたので以後軍人生活中この教訓を守りました」と振り返っており、この体験こそが加藤馨氏を長い軍隊生活の中で生き残らせ、戦後の創業、さらにはケーズデンキの「がんばらない経営」の土台になったと言えるでしょう。

 「戦争を決して起こしてはいけない」と強く思っていた加藤馨氏の戦争体験が、この本で紹介され、今後の歴史研究の参考にされていくことは、当研究所としても大いに感謝するものです。

 なお、『乾岔子島事件史:―一九三七年の日ソ紛争―』(錦正社)は研究書ですが、公刊戦史『戦史叢書』などに比べてはるかに読みやすい本です。一般書店で手にすることは難しいと思いますが、amazonなどのネット書店、錦正社ホームページなどから購入できます。興味がある方はぜひお読みになってみてはいかがでしょうか。

amazon

錦正社

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA